大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2809号 判決

横内定平が山梨県巨摩郡榊村上宮地北新居所在の原判示約一畝十歩の畑に播種栽培中の人参並びに野田馨が右同所所在の原判示約三畝二十歩の畑に播種栽培中の馬鈴薯、いんげんを昭和二十五年五月五日被告人において各抜根したことは記録上これを肯認するに十分である。しかしながら定平耕作の右約一畝十歩の土地については一部分は、同人所有の同所一四〇六番地の二に属し、他の部分は同人が石川松太郎から借用にかかる松太郎所有の同番地の一に属する旨定平において主張し、また馨耕作の右約三畝二十歩の土地については、同人所有の同番地の三、四に属する旨馨において主張するに対し、被告人は右定平、馨耕作の土地はいずれも被告人の母横内かくじの所有にかかる同番地の内一に属する旨主張して互に譲らなかつたこと、そのため昭和二十四年当時の同村村長河野一郎外数名が仲裁に入り、一と先ず右畑の耕作は定平、馨及び被告人の双方においてこれを差し控えることと定めて示談解決につとめ、同年秋は右約定に従い双方とも右畑の耕作を行わなかつたこと、然るに昭和二十五年春定平及び馨が右争の未解決であつたにかかわらず被告人及び右仲裁人等に無断で前記のとおり右土地に人参、馬鈴薯、いんげんの播種を行つたため、被告人はこれを不当とし、定平及び馨に対し同年五月五日午前九時頃までに右耕作物を抜根せられたく、若し抜根しなければ被告人自ら抜根して引き渡す旨申し入れることを同月四日被告人から右村長河野一郎に依頼したところ、同村長からも定平及び馨からも定平及び馨がその申入に反対である旨の返事がなかつたこと、そこで被告人は定平及び馨がいずれも同村長から申入の伝達を受け、且つこれを承諾したものと信じ、同月五日午後九時を過ぎても同人等が抜根しなかつたため被告人自らその抜根を行つたものであることは、原審裁判所の証人横内定平、同野田馨、同河野一郎、同野田彦市に対する各尋問調書、原審裁判所の検証調書及び当裁判所の証人横内定平、同野田馨に対する各尋問調書によりこれを認めるに十分であり、右認定を覆すに足る証左はない。尤も、定平及び馨が被告人の右申入を承諾したことを認めるに足る証拠は記録に徴しても、また当審における事実取調の結果に照らしてもこれを発見することができないけれども、前認定のとおり被告人がその承諾を得たと信じて抜根したものである以上、(被告人がそのように信じたことについて軽卒のそしりを免れることはできないとしても)少くとも被告人は毀棄罪に対する犯意を欠いていたものと認めない訳に行かない。即ち被告人に対し毀棄の犯罪事実を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認の廉があるから、この点において原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。

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